張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

ユッケ食中毒事件の教訓

焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」で4人が死亡、数十人が重傷の衝撃的な食中毒事件が起きたと報道されたのが4月29日。既に3週間が経過し、風化の兆しさえ見え始め、事件の本質に迫る姿勢が見えてこないことを危惧している一人です。

派手な土下座謝罪会見で話題となった勘坂社長の行動に疑問を持った人が多いと思います。基本は「人頼りの姿勢」が極めて強く、事件の発端は全て、卸売り業者の責任であり、行政指導が甘い厚生労働省の責任であると転嫁していることです。ここには、専門店としての自己責任の重大さを微塵も感じない、儲け至上主義の権化と言って良い経営者の姿が浮かび上がってきています。

世界的に有名なリッツ・カールトンの経営理念を借用していたようですが、おもてなしの心遣いが皆無で、うわべだけの、魂のない理念となってしまった。経営理念は経営者が心の底から絞り出すようにして磨き上げたものでなければ本音ではありません。危険部位をトリミングせず提供すればコストダウンは実現しますが、危険は排除されない。トリミングを行えばコストアップになり、280円ではとても提供できないことは自明の理です。通常価格が1,400円程度のものが280で提供できるはずがない。あまりにも異常な低価格品については、いくらデフレ時代とはいえども常識の範囲内で疑ってみることも自己防衛の観点から必要ではないでしょうか。

ところで、近年、産地偽装、食品偽装、食中毒事件が多いとは思いませんか。これらの事件が多発する土壌が小泉構造改革時代に既に出来上がっていたのです。思い出して下さい。「聖域なき構造改革」の実現、「構造改革無くして景気回復なし」のスローガンで、日本の良き風土を徹底的に破壊してしまった規制改革。
キーワードは「事前規制」と「事後規制」。政府がきめ細かな法律を事前に作って規制していたのが事前規制。規制を緩和して政府の規制を撤廃することによって経済を活性化させるという市場原理主義の横行。
「事後規制」とは政府の関与を少なくし、民間が自由に競争することによって活性化を図ると言うもので、これに基づいて平成10年9月11日厚生労働省は「生食用食肉等の安全性確保について」と言う訓示規定を地方自治体に出している程度なのです。これでは悪徳業者が蔓延るのは当然の結果なのです。

「事後規制」とは各種のトラブルが起きたときは、司法によって解決してもらいたい。そのために弁護士数を平成30年までに5万人体制にします。いずれはフランス並の20万人の弁護士数にします。全ては訴訟によって解決して下さい。と言うのが「事後規制の」本質なのです。やがてアメリカ並みの100万人の弁護士数による訴訟社会の実現に向かって進行中なのです。この種の事件は止まるところを知らず増加すると考えられます。私達は常に良心に従って行動することによって自己防衛を諮るべきでしょう。