張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

豊かさと成長率

 戦後、零からスタートした日本経済は驚異的な成長率を達成し、今や世界第2位の経済大国になっている。途中、バブルの崩壊から失われた15年を経験し、ようやく立ち直った途端にアメリカ発賭博資本主義の崩壊で世界恐慌に突入してしまい、再び未曾有の経済不況に陥ってしまった。
 しかし、日本の金融資産は相変わらず世界一なのである。世界一金持ちなのに何故豊かさを実感できないのか。実感出来ないだけではなく今や極端な規制改革によってご存じのとおり2極分化が明確になりつつある。

 経済にはフローとストックという概念がある。日本経済は戦後フローで世界一になったけれどストックで遅れを取ったため豊かさを実感できないでいる。何故なのか。経済成長はフローで行う。則ち回転率である。回転率が上がれば経済は成長する。しかし、回転率だけを求めていてはストックが疎かにされてしまう。

 具体例を示そう。日本の木骨モルタル住宅の耐用年数は20年、木造作りで22年である。実際の統計では30年が耐用年数であると言われている。アメリカで55年、イギリスで77年である。イギリス並みの建物を維持するためには2回以上建て直さなければならない。イギリスが1回転に対し、日本は2回転以上である。回転率が上がると確かに成長率はアップする。しかし、ストックは変わらない。ここでヨーロッパ並みのストックを確保するために出来た構想が「200年住宅ビジョン」である。

 政府が積極的に推進し、ようやく民間の先進的な企業が実現化にこぎ着けた。各種の優遇税制を受けられ、建築コストは坪40万円程度である。200年住宅が実現すれば法定耐用年数から見れば10回転に相当する。これでようやく豊かさが実感できるようになる。これからの建築需要は200年住宅が主流となるだろう。
 もう一つ実例があります。以前小生はアメリカGE社製のエアコンを使っていた。税法の耐用年数が6年なのに、実際稼働したのは30年ほどである。日本製品だったら5回転しなければ維持できないのに1回転で済んだ。欧米のストック経済の実態を垣間見たといえる。日本経済は成長率という回転率に依存することなくストック経済に重点を置くべきであり、これが少子高齢化という低成長時代を生き抜くコツといえましょう。