張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

目からウロコが落ちる

目からウロコが落ちるとは、ある事をきっかけに、今まで解らなかったことが急に理解出来るようになったこと。・・・故事ことわざ辞典より。

公共事業の補償問題について
公共の利益の増進と、私有財産との調整を図るために、「土地収用法」が制定されており、不可侵の私有財産権について制限を設けていることはご承知のとおりです。この中で、収用による私有財産権の損失補償については、時価で算定し金銭で補償することが明記されています。私有財産の内、土地については問題ありませんが、建物等のように時の経過で価値が減少するものについては、償却後の価格が時価であると規定されています。

ここまで読まれた方は、そんなことは当たり前だと思う人が多いでしょう。本当にそうでしょうか。それは企業会計制度で採用されている減価償却理論を、利益概念とは全く関係のない「家計」との区分が明確にされていないために起こる錯覚なのです。
確かに建物等の時価を算定する方法として減価償却理論は有効ですが、それはあくまでも参考でなければならないのです。

具体例です。木造建築で購入価格三千万円、耐用年数24年の住宅が20年を経過した時点で収用問題が起きれば建物の価格は四百八十万円となります。この損失補償金だけで建物は再建できますか?差額は当然借金です。これでは移転が困難になってしまいます。

「居住の権利」についての認識がなく、その為、今日まで全く無視されてきていたのです。

住居は、人間が生活を営むための基本的な条件であり、憲法でも住居の不可侵性として規定されています。いわゆる「居住の権利」と言われるものです。この権利は、居住を始めたときから、建物が使用不能になるまで、時の経過によって減少するものではなく、価値は一定のはずです。

たとえ話に、預金は三角、保険は四角と言われていますが、「居住の権利」は四角に該当します。
この「居住の権利」が、今までの補償問題では全く抜け落ちていたのです。何故ならば、利益概念とは全く関係のない「家計」に、企業会計の償却理論を応用してしまったからです。

収用問題については「居住の権利」を主張して生活権を守らないと、収用されるに従い借金が増えるという現象が起きてしまいます。これでは憲法が保証する基本的人権が守られないことになってしまいます。「居住の権利」の理論値は再取得金額ではないでしょうか。
今日、憲法学者の間で「居住の権利」についての研究が盛んに行われているようです。