張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

歴史の真実 点と線 その4

幕末期に活躍した人物は殆どが郷士と言われる下級武士です。浪人となり収入が途絶えて毎日の生活費はどうなっていたのでしょうか。他藩に移動するには多額の旅費が必要です。重要な藩主や重役に面会するには、相応の工作が必要です。多量の武器弾薬の買い付け資金はどうなっていたのでしょうか。資金面から考えれば不可能である事が分かります。

どうして可能となったのでしようか。豊富な資金と情報を提供してくれたスポンサーがいたからです。今日、長崎の名所となっているグラバー亭の主人、イギリス商人グラバーです。表向きは貿易商人ですが実態は武器商人です。黄金の国ジパングを侵略するには、宣教師の裏の役割を利用して内乱を起こし、双方に武器弾薬を販売することで暴利が獲得できます。その結果、あわよくば植民地に出来れば万々歳です。

そこで「回天」という理想像を創り上げ、グラバーの意のままに活動してくれる人材を集め、これに豊富な資金を提供し、宣教師の集めた情報を下に、諸藩の開明藩主や重役を取り込むために諸国を往来させ、倒幕を旗印に内戦を多発させれば武器商人にとって最高のビジネスとなります。だから、イギリス以外の欧米列強は各藩に軍事協力を申し込みますが、列強の真意を知り抜いていた指導者はこの誘いに乗らず、国内解決に心血を注ぎ、江戸城無血開城という離れ業を実行出来たのです。

小説や映画はあくまでもフィクションです。これで有名になった維新の英雄について、生活面から考えるとグラバーの意のままに行動するエイジェントと理解するのが真実に近いと思います。これについての研究成果は「加治将一」氏の著書を参照して下さい。

明治維新となり「鎖国」から目覚めた日本は、植民地支配を免れ、自衛の為には「富国強兵」以外に道はないと決意し、国民の目は一挙に世界に向かって注がれるようになったのです。世界に向かって目を開くには必然的に「地政学」が必須となります。「地政学」とは、地理的な環境が与える政治的、軍事的、経済的な影響をマクロの視点で研究する学問で、欧米諸国では普通の学問です。

地政学」から見ると清国と朝鮮の存在が極めて重要である事が理解出来ます。友好国であれば問題ありませんが敵国となった場合は、喉元に匕首を突きつけられた状態で、極めて不安定になってきます。この関係が遠因となって、日本の自衛の為に起きたのが日清戦争なのです。
次回は自衛のための日清戦争についてお話しです。