張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

本当のお客様第一主義とは

平成23年1月10日号の「日経ビジネス」に“ムダ”が成長の糧というタイトルで特集が組まれていましたのでご存じの方もいると思いますが、「お客様第一主義」の事例紹介に最適と考え、記事を再掲します。
飽くなき原価低減を繰り返した日本企業だが、生産性向上による経済成長には限界も。前時代の遺物と目されたパパママストアが息を吹き返した裏に時代の変化が見える。“ムダ”を競争力とする新種の企業群が日本の閉塞感を打ち破る。と。

パパママストア」とも揶揄される系列店は、経営規模が劣るがゆえに経営は非効率で商品の値段も高い。勿論他社製品を売ることも難しい。事実、多様化する消費者ニーズとバブル崩壊以降、下落する一方の価格の中で、系列店は次第に重荷になってきた。

家電量販店に比べれば、品揃えは限られていて、商品も割高だ。売れ筋商品の一つ、37型デジタルハイビジョンテレビは15万八千円と、周辺の家電量販店より二万円も高い。しかし、商品の儲けを示す付加価値率は大手家電量販店の約2倍。38%を叩きだしていると言うから驚く。その名はパナソニックの系列販売店セブンプラザ。

同社の山口社長曰く。「売らなくて良い」。徹頭徹尾お客様のために働けと言うことだ。少しでも売ってやろう、もうけてやろうという下心があれば、その姿勢がお客様に伝わるし、対応も疎かになる。だが、お客様のために身を粉にして働けば、必ず売上はあとから付いてくるという。これが社長の経営哲学である。
お客様との関係は商品の販売後も続く。購買した日から1週間後、1年後、そしてメーカー保障が切れる直前に不具合がないか点検に訪れる。それ以外でもテレビやエアコンなど、リモコンの電池を無料プレゼントするために訪問。2ヶ月に一度上顧客には米なども送り届けている。

「直ぐに来てもらえるのが本当にうれしい」。一人暮らしを続けている高齢の女性の家には最新の電気製品がずらりと並ぶ。全てセブンプラザからの購入だ。
社長の経営方針は敢えて「非効率と質で勝負」と言う。「ムダ」な事に価値を求める点である。短期的には利益を毀損するような事業や商品、サービスに惜しみなくカネをつぎ込んでいく。そして最後に「遠回り」。企業の利益に直接結びつかなくてもお客様や社会のために行動していく。お客様や地域が栄えれば、回り回って我が社の業績に跳ね返る。そう信じているからこその行動だ。見事な経営理念である。「理念型経営」の実践ケースとして何を学び取りますか。

ところで家電大手量販店ベスト電器が、高齢者を対象に「御用聞き」を開始したと発表。大手でも地方では「お客様第一主義」の一貫としてセブンプラザの経営方針を取り入れるようになった。「パパママストア」にとっては脅威である。勝負は、どれだけお客様のために真剣に対応できるかである。オーナー社長と大手量販店のサラリーマンとの勝負。どちらに軍配が上がると思いますか?