張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

腕利き大工棟梁の憂鬱

最近、地方では腕利きとして有名な大工棟梁から,将来の社員教育について相談を受けました。
人材不足の中で若手を採用しても、仕事に対する意欲が感じ取れず数年で退職してしまう。このままでは事業の継続に不安があるというものでした。

棟梁の若い頃は在来工法が主流で,天然木を自在に活用し、適正な価格で永く快適で健康的な住宅を作ることが当たり前になっていたのです。このような環境では腕を磨くことが生き甲斐となり、力量を思う存分発揮出来たと言います。

昭和50年頃からプレハブ工法による住宅が、安価で短納期を武器に,大手プレハブメーカーが参入してきました。プレハブ工法とはご存知のとおり、予め部材を工場で生産・加工し、建築現場で組み立てるだけの工法を言います。その分、画一的で,安価で、短納期が高度成長期のサラリーマンに歓迎され,今日の巨大マーケットを確立しました。今や,日本は世界一のプレハブ工法大国となり、在来工法を駆逐するまでに成長したのです。
この傾向は、安全で快適な生活を求める国民にとって決して好ましい状況ではないことを次回以降に説明します。

安価で短納期のプレハブ工法は,今や天然木材をふんだんに活用した在来工法よりも高価格となっている現状を注視すべきなのです。そればかりではありません。プレハブ工法そのものが健康被害を発生させている事実をしっかりと理解しておく必要があります。

プレハブ工法は部材を工場で生産・加工するため,熟練工は必要ありません。大工の基礎知識さえあれば十分対応が出来ます。ここが問題なのです。
工務店に就職することは、将来、立派な大工となって在来工法の建築をしたいという強い願いを持っていたはずです。しかし、現実は部材を組み立てるだけの仕事に終始し,腕を磨く機会を奪われているのです。これでは将来の夢は描けません。

従って、社員教育の原点は,伝統ある在来工法の利点(健康・安全・安心)を積極的にPRし、プレハブ工法からの依存度を下げて、社員に夢を持たせることであると説明しました。
次回は、今や世界に例を見ないプレハブ大国となったプレハブ工法のデメリットについて概要を説明します。