張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

山よりでかい猪が出た。

来年の一月から改正相続税が施行されます。既にご承知と思いますが基礎控除と人的控除が4割りカットされるため相続税の納税者が大幅に増加します。これを受けてセミナーが各地で盛んに行われていますが、相続税対策の基本は長期的視野に立って行うことです。そのためには相続税のシミュレーションを行い概要を把握することです。全体像が掴めて初めて効果的な対策を講じることが出来るからです。

相続税の関心が高まっている矢先、相続税の裁判で最高裁が納税者の主張を退けた判決を下し話題となっています。
先ず、税法の基本原則は担税力に着目し、応能負担で納税する思想が根底に流れています。これを頭に入れて以下の事実を読んで下さい。

平成3年3月関西の芦屋に住むAさんは母親の死亡により多額の不動産を相続しました。大半が不動産で、当時の評価額は全体で18億8600万円。このうちAさんが取得した分は9億6054万円で99%が不動産、税額は4億7344万円となりました。相続した土地にはAさん所有の建物が存在しておりました。他に更地の土地は相続していないため、相続した不動産を物納の対象にしました。

ところが、物納の時点で、40%でしか評価出来ないことを税務署から知らされました。課税の時は100%で評価し税額を計算しておきながら、同じ財産を物納するときには40%でしか評価してもらえない事に納得がいかず裁判を起こしました。評価してもらえない60%に相当する税額が不足してしまい支払が困難になってしまうからです。

相続税では、自分の住んでいる不動産を物納する場合、借地権が発生し、これが著しい変化があったと見なされ40%評価という規程があります。Aさんは自分の家に住み続けることが「著しい変化があった」かどうかについて争点を絞り争いました。
ところで、相続税には物納という制度がございます。これは現金納付が困難な納税者を救済するための制度です。

しかし、結果としてこの精神は生かされずAさんは昨年敗訴の判決を受けたのです。
税務署が物納処理を怠った結果20年間未納扱いとされ、延滞税の税率14,6%で計算すると延滞税だけで5億4691万円という途方もない金額を本税の他に支払うことになってしまいました。
更に悲劇が続きます。バブルの崩壊で不動産は値下がりし、処分することすら不可能になってしまったのです。

これは極端な事例ですが、現実にあったお話しです。
不動産での相続はトラブルの原因を作ってしまう危険があります。唯一の解決策は事前シミュレーションを行って対策を練ることです。
結果として9億の財産に対して、本税を含め10億の税金となってしまったのです。
未納分は他の相続人が連帯納税義務者になっているため親族間の関係がズタズタになってしまったようです。