張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

国益のため不退転の決意を示せTPP

 平成25年8月27日の産経新聞で、ISD条項(国家と企業家の紛争解決)に懸念を抱いている団体から、政府に対して質問があり、これに対応した内容が報告されていたことはご承知のとおりです。

曰く「ISD条項が導入された場合、海外企業における日本政府への訴訟の乱発を防止する策があるのか、日本が決めた制度に注文を付けられ国家主権が損なわれる危惧がある。この質問に対し、政府側は日本企業が途上国で不利益を受けないように担保するルールであると説明し、日本がこれまで結んだ9件の経済提携協定では、日本政府が訴えられた事例はないと指摘し、導入推進に理解を求めた」とあります。
日本とアメリカは「EPA・・・経済連携協定」は結んでいませんから今のところISD条項で訴えることは出来ないのです。

この記事を読んで、背筋が寒くなるのを覚えました。TPP交渉を行う日本政府が、この程度の理解度で薦めているのか、日本の国益を何と心得ているのか。正に将来に対する危機存亡の淵に立っていると言わざるを得ません。

ISD条項は、既にご案内のとおり、投資家が紛争解決の方法として「国際投資紛争センター」に提訴します。訴えられた政府は当該裁判を拒むことは出来ず、一般の裁判のように反対尋問もありません。不利益があったかどうかだけで争われるのです。これに敗訴すると国際条約ですから、当然内国法に優先します。正に治外法権であり、司法の権限が損なわれる極めて危険な条項です。TPP21項目の内、最重要課題がISD条項なのです。

何故アメリカは日本に加入を強要するのか。ご存知のようにアメリカは訴訟大国です。かつて、対日赤字を解消するためあらゆる手段を講じてきましたが、ことごとく失敗した苦い経験を持っています。代表的なものとしてプラザ合意による円高誘導、繊維摩擦、自動車摩擦等。
アメリカは訴訟という手段を使って日本市場をこじ開けるのが主目的です。既にアメリカと「EPA」を結んでいる国々では数え切れないほどの訴訟が起き、殆どが相手国の敗訴に終わり、理不尽で莫大な賠償金を支払っている事実を重視すべきです。

「賢者は最悪の事態を想定し、楽観的に行動する。愚者は楽観的に考え、悲観的に行動する」と言われています。正に政府の考え方は大甘で愚者の考え方なのです。国益のため不退転の決意を示して貰いたい。
但し、同情すべきことがあります。国防をアメリカに依存しすぎたツケを今払わされているのです。TPP交渉の成功は、自分の国は自分で守る気迫を国民が持つことによって解決します。「風が吹けば桶屋が儲かる」喩えです。