張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

仕掛けられた罠に気付かず交渉する愚・・・TPP パート2

前号249からの続きです。ISD条項の罠についてネットで公開されている事例を紹介します。

事例1.カナダでは、ある神経性物質の燃料への使用を禁止していた。この規制はヨーロッパや米国の殆どの州にある。ところが米国のある燃料企業が、この規制で不利益を被ったとしてISD条項に基づいてカナダ政府を訴えた。そして審査の結果、カナダ政府は敗訴し、巨額の賠償金を支払うと共にこの規制を撤廃させられた。

事例2.メキシコでは、地方自治体がある米国企業による有害物質の埋め立て計画の危険性を考慮して、その許可を取り消した。するとこの米国企業はメキシコ政府を訴え巨額の賠償金を獲得した。

ISD条項の罠は、相手国の規制や商慣習や伝統により、不利益を被ったとして訴えれば莫大な賠償金を獲得できる制度です。アメリカは訴訟社会です。日本の何を狙っているかお解りでしょう。オバマ大統領は貿易額を二倍にすると宣言しています。日本の市場を完全開放する方針です。デフレ不況の日本経済は耐えられるでしょうか。

サミエル・ハンチントンの著書「文明の衝突」によれば、世界には七大文明があるが、日本は一国一文明を形成し、極めて特異な存在であると指摘されています。日本一国だけ七大文明の一翼を担うには、それだけの伝統と文化が長い歴史の中で培われてきた証拠です。世界から見れば日本は異質な国と思われたり、日本の常識は世界の非常識と言われたりするのも、日本文明の一端を言い表しています。

アメリカから見れば特異な日本の市場を何とかしてこじ開けようと試みましたが殆どが失敗に終わった経緯があります。TPP参加を強要するのは、ISD条項の罠を使って市場の開放を狙っているのです。この罠に気付かず、国益を無視してまで参加する必要はあるのでしょうか。中には条約を結んでも不利になれば脱退すれば良いと軽く考えている人もいますが、歴史を知らなすぎます。

かつて、江戸幕府安政5年(1858年)、アメリカ、ロシア、オランダ、イギリス、フランスと結んだ通商条約は武力の脅威と無知につけ込んだ不平等条約でした。明治5年に条約の改正に着手してから不平等条約を完全解消するまで40年掛かり明治44年にようやく回復したのです。
条約締結の重さをかみしめ、仕掛けられた罠を解明し、国益を考えれば、必然的にTPP参加は危険である事が理解出来るはずです。それでも参加するならば日本文明を破壊する覚悟があるのかを問いたい。軽挙妄動は謹んでもらいたい。