張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

多忙な経営者が陥りやすい陥穽とは

次の文章はいつ頃のものか解りますか。曰く「今時の人は、口癖のように忙しいという。しかし、そのしているところを見ると、実際に必要な事をしているのは十の中の一、二に過ぎず、つまらない仕事が、十の中のうち八、九である。そして、このつまらない仕事を必要な仕事と思っているのであるから、これは忙しいのももっともなことだ。本当に何かをしようとする志のある者は、こんな穴に入り込んではいけない。」
これは幕末の儒学者佐藤一齊の著書「言志四録」の中の文章で、現代語にしたものです。「言志四録」はご存じのように、幕末維新の志士たちがバイブルとして活用したもので、最強の人生指南書と言われ、明治大学の斉藤教授が現代語で解説したものからの抜粋です。

さて、多忙の「忙」とは、心が滅ぶと書きます。従って、忙しいという言葉を使いすぎると、いつの間にか目先の仕事に目が奪われてしまい、経営者の必須条件である「経営」が疎かになってしまいがちです。
目先の仕事は、ルーチンワークですから本来社員が行う業務です。社員の行うべき業務を経営者が行えば、「経営」は一体誰がするのでしょうか。これに陥ってしまうと重大な時流の変化に気付かず、従来からの惰性が支配し、業績が思うように向上しません。このようなタイプの経営者はおおむね「人頼りの姿勢」が強く「自分から主体的に行動する」姿勢が弱いのが特徴です。

本来、経営者の業務は「経営」することであり、その姿勢は「人頼りの姿勢」ではなく「自分から主体的に行動する」姿勢でなければいけないのです。
この体質が強くなると、最も大切な我が社の「経営理念」を策定する努力を忘れてしまい、いわゆる戦術論で経営を行い、業績を落としているケースが散見します。経営の原則を無視すると、何をどうしたらよいのか解らなくなり、不安感に陥ってしまい、打つ手に統一性がなく、社内がバラバラに行動して持てる力を発揮できないでいるのです。

あちらで良い話を聞けば直ぐ採用し、こちらで良いと聞けば採用し、統一性に欠け、壁のあちこちにスローガンや標語が雑然として掲示されています。他人の話はその人のノウハウによって成り立っているもので表面だけ真似てみても効果は期待できないことは経験しているはずです。

そうです。我が社の「経営理念」に基づいた、我が社のノウハウを構築する事こそが経営者に与えられた使命であることに気付き、一日でも早く経営体質を強化してもらいたいものです。