張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

フローとストックのお話し

 フローとストックはマクロ経済学を理解する上で重要な概念と言われています。フローとは「流れ」、ストックとは「蓄え」のことです。例えば1年間に何個家が建築されたかはフローで、その結果何個家が存在したかがストックと言います。

 日本は戦後、廃墟から出発し、世界に例を見ない高度成長を遂げたことはご存じのとおりです。しかし、世界に類を見ない金持ちになったでしょうか。大多数の人たちは豊かさを実感していないのが現状です。何故でしょうか。確かに復興のためには成長性を重視することは当時の政策として正解だったのです。
 時代が変わり、「低成長」、「少子高齢化」、「エコロジー」がキーワードとなった今日、従来のビジネスモデルは最早通用せず、国民は心身共に「豊かさ」を求めたストック経済に大きな期待を寄せつつあるのが現状です。

 ここで、プレハブメーカーの功罪について考えてみましょう。高度成長時代には工場一貫生産方式による同品質でローコストのフレハブ住宅は国民の期待に応えつつ大成功を収めたことは、今日のフレハブメーカーの隆盛を物語っています。この結果、安物住宅の代名詞となってしまい、耐用年数はたったの26年。アメリカやイギリスの50年、75年とは雲泥の差になってしまった。

 プレハブメーカーの耐用年数の長期化に対する姿勢が劣化したのが問題なのである。これは当たり前かも知れない。例えばイギリスの75年に比べれば日本は3回建て直すことになり、三倍の成長が可能となりプレハブメーカーは確実に成長する以上、耐用年数に対する責任を放棄することは自然の成り行きかも知れない。結果として国民は豊かさを実感しなくても。

 天然木材を利用した在来工法建築では、適時のメンテナンスをすれば100年以上長持ちするのが、木材の性質上当たり前であると言われている。この事実をどう理解したらよいだろうか。プレハブメーカーは従来のローコスト手法から、多様化と高級化路線に方向転換している今日、高収益体質を確保するに反比例して国民のストックが失われていく現状を打破しなければならない。これからの住宅に期待される耐用年数は50年以上を望む人が約半数を占めているアンケートを直視すべきである。

 これはプレハブメーカーだけの責任ではない。「ストック」を重視し、国民の期待に応えられる在来工法の工務店を探す努力を怠り、外観と機能性だけを追求し、最も大切な耐用年数という問題点を無視してしまった我々にも責任はあるのである。これではいつまでたっても豊かさを実感できない。