張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

これが本当の減税なのか?

 平成21年度税制改正の目玉は、事業承継税制の相続税贈与税の納税猶予制度である。
 これは「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づいて実施されるもので、自社株の相続や贈与の場合、税額の80%相当額が納税猶予される法律で、この制度に便乗し高額有料セミナーが盛んに行われている。

 この制度は後継者難や高額な相続税贈与税に問題を抱えている中小企業にとっては最も効果的な政策であると宣伝されている。

 しかし、現実の実務の上ではこの減税制度を活用することは不可能なのである。原因は平成18年5月から施行された会社法にある。明治32年に制定された商法を大改正して作られた会社法では、会社を公開会社と株式譲渡制限会社に区分し、公開会社はいわゆる上場企業、それ以外は株式譲渡制限会社として、取締役会の承認が無ければ株の譲渡が出来ない制度になっています。

 ここで、問題が発生するのです。先の納税猶予を受けるためには対象となる株式の全てを担保に提供しなければならないことになっているのです。税務署の実務では株式譲渡制限会社の株式は担保として取っても譲渡制限がついているので処分は不可能なのです。従って担保として効果が無く、納税猶予は出来ないと言うことになります。

 中小企業のための事業承継税制と大きく宣伝して、国民の期待を煽りながら、実務では殆ど実行できない制度は、まやかしと言われても反論できない代物である。

 また、中小企業対策として法人税率を22%から18%に減税するとか、交際費課税を緩和するとか宣伝しているが、100年に一度の大不況と言われている実態を理解して政策を考えているのか。まるで人気取りのために表向きだけ減税すると言っているに過ぎない。

 何故ならば、景気が回復して所得が発生している場合ならばともかく、殆どの大企業が歴史的赤字決算の今日、中小・零細企業で利益が出るわけがない。利益が出なければいくら税率を下げたり、交際費枠をいじくっても何の効果も得られないことはよく考えれば分かるはずである。まやかしの減税で国民を惑わすべきではないと考えますが、如何でしょうか。