張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

お言葉ではございますが、新大統領閣下殿

 アメリカの新大統領が初の記者会見で「何もしなければ破局に至る」、「前例がない」などの言葉を連発して危機感を表明した。日本の「失われた10年」を引き合いに、先ずは政府主導の財政支出で危機を突破する必要性を強く訴えた(産経新聞)。
 基本的にはケインズ学派経済学を活用して、民間が不況で大混乱している時には、政府が財政出動して需要を喚起し回復させるという考え方で真っ当な理論である。

 しかし、ここで日本の「失われた10年」を引き合いに出されたことに違和感を感じるのである。
 当時不動産バブルを封じ込めようとして大蔵省銀行局長が金融機関当てに不動産融資の総量規制を行うよう一遍の通達を出したことが原因でハードランディングを起こし、バブルの崩壊となってしまったのである。
 急激なバブル崩壊に効果的な対策が打てず、結果的に回復するまで10年余を要してしまった。疲弊した経済を見透かして禿鷹ファンドが不動産を買いあさったのは記憶に新しい。
 ここで注目すべきはバブル崩壊の付けを国内で処理し海外に迷惑を掛けなかったことと、10年もかかって処理できたほど国内に余裕があったことである。

 今回のアメリカ発金融危機の対策に緊急を要するのは、レバレッジを効かせたバブルがとてつもなく大きく緊急対策以外に問題解決が出来ないほど衝撃が大きいことを物語っている。また、先にも指摘したように極端な市場原理主義の横行で、国家や金融業界こぞって、あおりに煽って世界中に毒饅頭を売りさばいた結果であり、これに対する謝罪らしきものが見えてこないのが残念である。

 野蛮なデリバティブの放置、レバレッジ規制緩和サブプライム貸し出し急増の黙認はアラン・ブラインダー・プリンストン大学教授が指摘しているとおりであり、毒饅頭を世界中に販売してしまった売り主としての責任についてはどうなのか、覇権国アメリカの摂理ある行動を期待したい。日本のケースとは全く違うのである。