張子房塾

経営者の皆様を対象に経営塾を開設しました。今までの経験を中小零細企業経営者支援に全力投球します。

税と司法取引

 最近、税に関する取扱規程が厳しくなってきたことは,事務所通信特別版「税に関する罰則規定の改定について」で指摘したとおりです。今回も新たな法律が6月1日から施行されることになりました。それは「司法取引制度」です。正式名称は「証拠収集等への協力及び追訴に関する合意制度」と言います。
 国税犯則法が廃止され、「国税通則法」に編入されたことは,課税強化を狙ったものと言われています。また、いわゆる共謀罪の対象に税法が入ったことで、税務調査の前に司法警察の介入が法的に可能となり,税務行政に混乱が生じる恐れがあります。

 さて、「司法取引」とは、一定の犯罪に対して,被疑者・被告人と検察官との間で、弁護人の同意がある事を条件として、被疑者・被告人が他人の刑事事件の解明に協力するのと引き替えに、検察官が被疑者・被告人の事件について有利な取り扱い(処分の軽減等)をすることなどを合意する制度です。即ち、共犯者の犯罪を明らかにする見返りに,容疑者や被告人の刑事処分を軽くする取引で、従来の日本にはなかった制度で,今後の捜査・公判に大きな転換点を迎えます。

 犯罪の対象は法律で列挙されていますが,政令に定める財政経済犯罪の中に税法や会社法が含まれていることです。ここで,重要なことは、自分の罪を免れ,あるいは軽減してもらう目的で行われる「虚偽供述」によって、無数の人間の「引き込み」が起きる可能性が極めて高くなることです。
 例えば,会社ぐるみの脱税事件で逮捕された経理責任者が「脱税は社長の指示だった」と供述し、社長が起訴される一方で,本人は起訴を免れるケースも起こりえます。

 司法取引の導入は,先に述べたように虚偽供述などによる冤罪が増えます。もし、社内や取引先などで犯罪が行われた時には会社として司法取引に応じるかどうか対策を考えておく必要がございます。
 その為には内部監査の厳格化、不正行為に対する報告義務化、機密情報漏洩の罰則強化、社内におけるトップシークレット取り扱い強化等の再検討を行い、企業防衛に一層の注意が必要となります。